6-1. ゆらゆら揺らしたい!――「安全で」「楽しい」動く装置のつくりかた
2024.08.19
科学館の展示装置をつくっているMedico-tec株式会社のお仕事紹介、第6弾です。
今回は ものを吊り下げて「ゆらゆら揺れる」ふりこの動きに使われる部品を取り上げます。
---------------------------------------------------------------
ふりこのように物を吊るして揺らす、という用途には、細長いひも状のものが適しています。
ひとくちに細長い部品といっても、重さやしなやかさ、なにより強度がさまざま存在するので、以下のような部品から装置の仕様に合ったものを選択していきます。
1. 頑丈な糸(ケブラー糸、PEラインなど)
"東レ・デュポン株式会社HPより引用( https://www.td-net.co.jp/kevlar/about/index.html )"
ケブラーは商標で、防刃手袋や防弾服、建築物の補強などに使われるものすごく強い繊維です。
この糸や、大物釣り用のPEラインなど頑丈な糸は、展示装置でひもを使わなければならない場合(動くジオラマなど)に重宝します。
ただし、体験者が自由に触れられるふりこに使用すると、ものの数週間で千切れてしまいます。取付け金具とのこすれや、強い力であらゆる方向から引っ張られることが原因のようです。
さらに、複数のふりこを並べた装置の場合、ふりこ同士が絡まってしまいやすいです。
そのため、当社ではふりこには採用されなくなりました。
2. ワイヤーロープ
ものを吊るすさいの定番で、展示装置だけでなく店舗の吊り棚や、工事現場での荷物吊りなどにも使われます。
ワイヤーの直径が太くなるほど頑丈になりますが、太すぎると巻き癖が出たりと不具合も起こるので、吊るものや引っ張られる力の重さに適切なものを選定します。
ふりこにワイヤーロープを使うときに悩ましいのが、ロープの固定方法です。
ワイヤーロープの固定には、ワイヤーを金属の筒に通して筒を押しつぶす「かしめ」が広く用いられます。
かしめ用スリーブ(筒)
正しくかしめられれば、もっとも信頼性の高い固定方法と言われていますが、反面、いちどかしめたら長さの微調整ができなくなるので、ふりこで用いるには、別の部品でロープの長さを微調整する工夫が必要になります。
かしめ以外では、主にネジを使って締結する部品がありますが、時間がたってネジがゆるむ可能性を考えると、常設展示には使いにくいものです。
---------------------------------------------------------------
次回はひきつづき、ふりこの揺れる動きをつくる細長いひも状の部品を見ていきます。
矢野恵美