5-3. 回す力と安全のはなし ――「安全で」「楽しい」動く装置のつくりかた
2024.04.08
科学館の展示装置をつくっているMedico-tec株式会社のお仕事紹介、第5弾です。
今回も、テーマは「回す力と安全のはなし」。ボタンを押したり、ハンドルを動かしたりした結果として、表現部が回る場合に気を付けている安全のポイントの話です。
前回は表現部がモーターで回っている場合の安全ポイントをご紹介しましたが、今回はモーター以外で回る場合を見ていきます。
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〇結果として回る---装置の具体例
体験者が操作して、結果として表現部がくるくる回る装置はたくさんありますので、具体例をご紹介しつつ安全ポイントを見ていきましょう。
・水や空気の力で回る装置
発電の体験装置に多いのですが、水の流れや風を発生させて水車や風車を回すものがあります。
こちらは風力発電の体験装置。手前の四角い空気砲を叩いて風を出し、奥にある風車模型の羽根を回します。
このように風を使う装置の場合、風の流れを遮らないようにする必要があるので、回る風車を全部カバーするのは難しいです。
ただ、風車の羽根は薄く、回転速度も速いので、回っている間に触れると負傷のリスクもあります。そこで、以下のような対策をとります。
・風車の位置をできるだけ遠くして、手が不意に当たらないようにする
・手を伸ばす経路を塞ぐようにカバーする
水力の場合は、周りに水が飛び散らないように装置全体をケース内に収め、回っている箇所は触れられる位置に無いことが多いので、安全性は比較的高いと言えそうです。
・表現部を手で回す装置
結果が表れる部分を直接手で回す装置もあります。
左の写真は、アニメーションの原理を体験できる「ゾートロープ」 右の写真は、円盤部分を回してパターン点滅するLEDの光の残像を観察します。
いずれも、結果を観察する部分(表現部)を体験者が直接回す装置です。
直接回す場合、下手に一部だけ覆ってしまうと、余計なすき間ができて服や体を挟み込んでしまうリスクが上がるばかりです。
そこで安全策として、以下のようなことを行います。
・鋭利な部品を使わない
・速く回しにくくする(抵抗をつける)
速く回しにくくする、というのがかなりの難題で、弊社の設計陣も毎回悩みがちらしいです。
というのも、装置ごとに「これくらいの速さでは回ってほしい、でもこれ以上は速く回らないように」という加減が変わってきます。
そのうえ、動力源が人間の力、つまり一定でなく、装置自体の大きさや回す部分の重さなど、設計のたびに異なる条件に合わせる必要があります。
そのため「たいていこの部品が使える」という定石がなく、ときには減速のためのユニットを一から製作することもあります。
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これまで、装置の「回る」動きにまつわる部品や、安全の話をお届けしてきましたが
回る動きについての話は、今回でひと区切りとしたいと思います。
装置の中身や、つくってみることに興味がある方のヒントになっていれば幸いです。
矢野恵美