5-2. 回す力と安全のはなし ――「安全で」「楽しい」動く装置のつくりかた


2024.03.01

科学館の展示装置をつくっているMedico-tec株式会社のお仕事紹介、第5弾です。

前回に引き続き、テーマは「回す力と安全のはなし」。ボタンを押したり、ハンドルを動かしたりした結果として、表現部が回る場合に気を付けている安全のポイントの話です。

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〇結果として回る---装置の具体例

体験者が操作して、結果として表現部がくるくる回る装置はたくさんありますので、具体例をご紹介しつつ安全ポイントを見ていきましょう。

・モーターで回る装置

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「回る」動きの代名詞、モーターで表現部(左側、少し高くなった円盤)が動く装置です。ボタンを押すと円盤が回り、上にのせた紙の色が変わって見える現象(『ニュートンのこま、ベンハムのこま』として知られる)が体験できます。

さてこちらの装置、どこも危ないところなんてない感じですよね。回る部分に、ものが引っかかりそうな出っ張りもありません。

ただし、ひとつ間違えると危なくなるポイントがあります。それがこちら。

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「回る部分」と「回らない部分」のすき間です。

こちらの装置は すき間がピッタリ閉じていて安全性が高いですが、このすき間が中途半端に大きいと、指などを詰めて怪我をするひとが出てきかねません。また、ものが詰まって回せない状態で、なおもモーターを回そうとし続けると、故障してしまいます。

身近で似た例は、エスカレーターの階段と手すりのすき間があります。エスカレーターに乗ると音声案内が流れて、階段のふちには黄色いペイントがあってと、しつこいほどに注意を促してきますよね。

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そこからも分かるように、モーターで動くものと動かないもののすき間に何かが詰まってしまうことは、けがや故障に直結しますし、装置の規模が大きくなるほど被害も大きくなりがちです。

ということで、弊社で表現部が回る装置をつくるさいは「すき間」の大きさにかなり気を遣っています。

・モーターで回る装置の安全対策

設計のさいにいくら気を遣っても想定外はありえますし、悲しいことに装置にいたずらしようというひとも出てきます。

そこで、万が一、モーターが回りたいのに回れない状態になったときに被害を大きくしないよう、できる対策があります。

例えば、トルクリミッターを使う方法です。

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"https://tt-net.tsubakimoto.co.jp/より引用"

トルクリミッターは、モーターと回したいものの間に取り付けて使います。

その役割は『一定以上の負荷がかかった時に 空回りする』こと。モーターが回りたいのに回れないような状況になったとき、このトルクリミッターが空回りすることでモーターの回ろうとする力を逃がし、故障から守ってくれます。詰まっていたものが取り除かれた場合は、自動的に空回り状態が解除される優れものです。

このトルクリミッターがあることで、故障のリスクが減りますし、例えば重いものを載せると危ないような部分に使っておけば、間違えて重しをのせたら回転が止まるという安全対策にもなります。

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長くなってきたので今回はここまでにして、次回はモーター以外で回る例を紹介していきます。

矢野恵美