5-1. 回す力と安全のはなし ――「安全で」「楽しい」動く装置のつくりかた
2023.11.27
科学館の展示装置をつくっているMedico-tec株式会社のお仕事紹介、第5弾です。
今回のテーマは、「回す力と安全のはなし」。回す力を使いたいとき、安全な装置にするために気を付けているポイントをご紹介していきます。
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〇回して入力 ---ハンドルの形---
突然ですが、「ハンドル等を回すと何かが起こる」装置に着けるハンドルとして比較的安全なものはどれでしょうか?以下の選択肢から選んでみてください。
筆者は2の円盤型と考えます。(もちろん場合により、適切なハンドルの形は変わってきます)
3の朝顔と形は似ていますが、中の穴が有るか無いかで安全性がかなり変わってきます。
たとえば小さなお子さんは、ほかの子がハンドルをめいっぱい回しているタイミングでも、気になったらまっすぐ手を伸ばしてしまう場合があります。
このとき、ハンドルが円盤状であれば「手がぶつかって痛い!」で済みます。
ただその円盤に穴が開いていると、その穴に手が入ってしまって巻き込まれることがあるのです。
「いや、そんな危ないことせんやろ...」と思ったかたは、ぜひ土日などお子さんの多いタイミングで科学館に行って観察してみてください。
楽しくなっちゃったお子さんがたは、想像よりだいぶ無茶をします。
人が多くてザワザワしているとか、注意する保護者が近くにいないとかいう場合はとくに、
スイッチは力いっぱい はたくものですし、何かを回せるとなると どれだけ速く回せるか試してみずにはいられません。
上の写真の装置は施設オープンから1年半ほどで緩衝用のクッションが千切れましたし、
私が初めて本格的に関わったのは楽器を鳴らして出た音を測定する装置なのですが、科学館に納品したあと打楽器のバチは半年で折れ、マラカスは1年もたずに割れました...。
このように、お子さんがたが力いっぱい操作することを想定すると、1の円盤型+持ち手は、ハンドルを持ち変えずに回し続けることができる分、回すスピードが上がりやすく、加えて取っ手が出っ張っている分、安全性はやや下がります。
また、4のレバーは周回させるというより動く範囲を制限し、往復させて操作する場合が多いですが、軸と力点が遠くなることもあって大きな力がかかりやすく、壊れやすいです。安全のためにはあまり使いたくない部品です。
最近めずらしくレバーを使った装置は、大人のスタッフがアテンドして体験するアトラクションのものでした。子どもが自由に触れる場所ではないからこその採用ですね。
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ハンドルやレバーといった部品については、弊社の別のスタッフも取り上げていますのでぜひこちらもご一読ください。
MD技術要素(2)手回しハンドル
https://www.medico-tec.co.jp/staff_blog/2023/07/md2.html
MD技術要素(4)「量を変える」
https://www.medico-tec.co.jp/staff_blog/2023/10/md4.html
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今回は入力のさいに回す部品を取り上げましたが、次回は「結果として回る」場合の安全を取り上げたいと思います。
矢野恵美