3-2. 回す位置・向き・速さを変えたい!___「安全で」「楽しい」動く装置のつくりかた
2023.07.31
科学館の展示装置をつくっているMedico-tec株式会社のお仕事紹介、第4弾。この記事では、弊社の設計担当が「こんなことを考えて、こんなものを使って作っているよ」という内容をご紹介しています。
今回のテーマは、前回に引き続き「回す位置・向き・速さを変えたい!」。
前回ご紹介した「平歯車」「かさ歯車」以外には、どんな部品があるか見ていきましょう。
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前回から引き続き、クルクル回す動きの動力源は、人の力で回す「ハンドル」として進めていきます。
注:イメージ画像は色々と省略していますので全て参考程度にご覧ください。
前回ご紹介した「すべり軸受」は積極的に入れていますので見つけてみてください。
0. 部品なし: まっすぐ
前回同様、比較対象として、ハンドル・軸・飾りをそのままつないだイメージを見ておきましょう。
ハンドルを時計回りに一回転すると、旗も時計回りに一回転する装置です。
しかし、ハンドルと旗の位置関係が良くない感じですね...。ハンドルを回す人から旗が見えにくそうです。
今回も ここに部品を加えて、ハンドルと旗の位置関係を変えていきましょう。
3. チェーン・スプロケット/ベルト・プーリ: 軸をずらす・回転スピードを変える
"片山チエンホームページ(http://www.kana.co.jp/)より引用"
チェーンで動力を伝える機械で、最も生活に身近なものというと、自転車ではないでしょうか。
たまに、チェーンでなくベルトを使っている自転車も見かけますね。
チェーンやベルトは、自転車でいえばペダルの軸とタイヤの軸のように、距離のある2軸の間で回転する力を伝えたいときに使われます。
ちょっと想像してみてほしいのですが、自転車のペダルの軸とタイヤの軸を、すべて平歯車同士をかみ合わせてつなげてみると、どうなるでしょう。
歯車は何枚も必要になりますし、かみ合わせる箇所も多いので、ズレたり砂が入ったりと、回りにくくなる原因が多そうですね。何より重そうです。
ということで、離れた位置にある2軸の間を効率的に繋げたい場合はチェーンやベルトが活躍するのです。
ちなみにチェーンとかみ合って回転する歯車はスプロケット、ベルトと組み合わせて使う歯の無い歯車のような部品はプーリと呼ばれます。
さて、チェーンやベルトを使った場合の例をご紹介します。
ベルトで、距離のある平行な2軸間をつなげてみました。
もちろん、ハンドルの位置は上下逆さま(旗と逆の向き)でも大丈夫ですし、ベルトの選び方によっては2軸が平行である必要すらなく、ねじれた位置関係の2軸間でも動力を伝えられます。
また、歯車と同様に、スプロケットの歯数やプーリの直径を変えることにより、回転速度の加速や減速も可能になります。
柔軟な使い方が可能でとても便利ですが、精密な回転(ほんの少し回して止める等)の伝達にはあまり向かない・定期的なメンテナンスや交換が必要といった特徴もあるので、歯車との使い分けが行われています。
4. ユニバーサルジョイント: 角度を変える
最後にご紹介するのは、「ユニバーサルジョイント」です。
"MiSUMi ホームページ(https://jp.misumi-ec.com/)より引用"
2つの軸を、関節のように曲がる仕組みをもった「ユニバーサルジョイント」で直接つなぐ方法です。
関節部はかなり自由に曲がるので、軸同士に少し角度をつけてつないでも、回転する力をちゃんと伝えてくれます。
歯車などと違い、2つの軸同士を直接つないでいるので、回転速度や向きを変えることはできませんが
見方を変えれば、歯車などの部品同士のズレというリスクが減って、より確実に力を伝えられる方法とも言えそうです。
ちなみにこのユニバーサルジョイント、軸同士に角度をつけて正確に取付けるのはけっこう難しいようで、弊社の組み立て担当の方が「何度も微調整してなんとか取り付けられた」とぼやいているのを聞いたことがあります。
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前回から今回にかけて、「回す位置・向き・速さを変えたい!」というテーマのもとで、回転する力を伝える部品をご紹介してきました。
かなりざっくりとした紹介にはなりましたが、動くものづくりに挑戦したい!という方のヒントになれば幸いです。
矢野恵美