3. 回す位置・向き・速さを変えたい!___「安全で」「楽しい」動く装置のつくりかた
2023.06.12
科学館の展示装置をつくっているMedico-tec株式会社のお仕事紹介、第3弾。この記事では、弊社の設計担当が「こんなことを考えて、こんなものを使って作っているよ」という内容をご紹介しています。
今回のテーマは、「回す位置・向き・速さを変えたい!」。
前回の「クルクル回したい!」から続いた内容になります。
前回は、『軸』を使って回す動きをつくるときに、滑らかに回転するように補助する方法をご紹介しました。潤滑剤、すべり軸受、転がり軸受と、軸を固定しつつ摩擦力を下げる方法が色々ありましたね。
今回は、それらの部品で軸がクルクルと回るようになった先のお話です。
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まずは、クルクル回す動きの動力源を想像してみましょう。例えば人の力で回す「ハンドル」があります。このハンドルで回した力を、どう伝えるか?を考えていきましょう。
注:イメージ画像は色々と省略していますので全て参考程度にご覧ください。
前回ご紹介した「すべり軸受」は積極的に入れていますので見つけてみてください。
0. 部品なし: まっすぐ
軸とつながったハンドルを握り、くるくる回す...。そのとき、当たり前ですが、ハンドルと軸の回り方は同じです。
分かりやすいように先端に飾りをつけてみると、以下のような図になります。
ハンドルを時計回りに一回転すると、旗も時計回りに一回転する装置です。
しかし、ハンドルと旗の位置関係が良くない感じですね...。ハンドルを回す人から旗が見えにくそうです。
回す力を伝えつつ、もっと展示として見やすい形にできないでしょうか?
ここに部品を加えて、ハンドルと旗の位置関係を変えていきましょう。
1. 平歯車: 平行にずらす・回転スピードを変える
"MiSUMi ホームページ(https://jp.misumi-ec.com/)より引用"
まずは、「回転する機械の部品は?」と聞けば真っ先に思いつくであろう「歯車」です。
平歯車を使うと、軸の回転する力を平行にずらしつつ、別の軸に伝えることができます。
言葉ではいまいち分かりにくいので、図で見ていきましょう。
ハンドルの軸の歯車と、旗の軸の歯車がかみ合って、回転する力を伝えています。
このとき、ハンドルの軸と旗の軸は平行ですが、軸の中心は少しずれていて、ハンドルの回転方向と旗の回転方向は逆になっています。
そして歯車のもう一つの大事な役割が、回転スピードを変えること。
外周の出っ張り(歯)の数が違う歯車同士をかみ合わせることで、軸の回転スピードを変えることができます。
例えば、ハンドル側の歯車の歯数が30、旗側の歯車の歯数が15なら、ハンドルが一周するあいだに歯が30進み、旗は2周回っていることになります。
この加速・減速の仕組みは、電動モーターと切っても切れない関係にあります。
というのもモーターは基本的に、製品ごとに回転速度が決まっています。そこに歯車を組み合わせることで、目当ての回転速度へと調整していくのです。
ちょっと回転速度を変えたいな、と思った時に、一台何万円とするモーターを毎回買い直していては、らちが明きませんよね。一枚数千円の歯車を取り換えるほうが、よほど効率的です。
2. かさ歯車: 直角に曲げる・回転スピードを変える
次にご紹介するのは、「かさ歯車」です。
"MiSUMi ホームページ(https://jp.misumi-ec.com/)より引用"
同じ歯車でも、前述の平歯車とはかなり違う見た目をしていますね。
かさ歯車を使うと、ハンドルと旗の位置関係はこう。互いの軸は直角で、その延長線は一点で交わります。
また平歯車と同じく、ハンドルと旗の回る向きが逆になります。
軸の角度を変えられると、ハンドルを回している人が旗を見やすくなりますね。
回転する力を伝えつつ、向きを変えられる部品は活躍の場も多そうです。
かさ歯車も平歯車と同じく、歯数の違う歯車同士をかみ合わせることで回転速度を変えることができます。
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さて、長くなってきたので、ここでいったん切りたいと思います。
今回は歯車の特殊例として「かさ歯車」を取り上げましたが、ほかにも「ウォーム」「ねじ歯車」「磁力歯車」など、ちょっと変わった歯車は数多くあり、用途も実にさまざまです。
奥深くて面白いので、気になったらぜひ調べてみてくださいね。
次回は今回の続きで、歯車以外の部品を使って「回す位置・向き・速さを変えたい!」と考えていきます。
矢野恵美