一升瓶ケースを再利用する試み
生活の中のSTEAM(科学・技術・工学・芸術・数学)シリーズ。
今回は技術とアートにつながるお話です。
ある日、私はある倉庫の休憩スペースで一升瓶のケース(P箱)が椅子として置かれているのを見つけました。最初は、見た目が安っぽくて間に合わせの椅子だと思っていたのですが、座ってみると思いのほかとても座り心地がよくて驚きました。しっかりと安定感があり、通気性も良く、高さも適切で、とても軽く椅子として安心感がありました。
この重い一升瓶を運び続けるために生まれたケースの機能性はまさに昔からあるグッドデザインといえるでしょう。素材は見慣れた箱でしたがその座り心地に可能性を感じたので、再利用するアイデアを考えました。
この一升瓶のケースを椅子として使うことに決めたのですが、見た目が少し安っぽいのでそのまま使うと場末な感じになります。そこで室内で使うことを考慮して、座面をぺーパーコードという紙でできたロープで編んでみることにしました。ペーパーコードはハンスウェグナーのYチェアというデザイン椅子で使われており、座り心地が良く手仕事感のある仕上がりになります。今回は封筒編みで編んでみることにしました。
参考 https://www.haluta-shop.jp/?pid=118560346
編み方を動画で調べて学びながらP箱を編んでいきます。やってみたいというアイデアさえあればインターネットでHOW TOを学べる時代を生きていることが毎度すごいと感じます。側面にある穴からコードを通して少し編んでからドライバーのようなもので目を詰め、形を整えながら編み進めます。
コード張りを前提にデザインされた椅子と違って、P箱は側面の穴と干渉するため少し隙間のある編み上がりになりました。側面の穴まで距離があるのでコードのロスも生じてしまいます。P箱にあいている穴をうまくつかって編み方を工夫すれば、この箱を編む最適解が見つかるかもしれません。
完成した椅子に座ってみると、予想通り安定感のある構造と座面の柔らかさが相まった良い椅子になりました。再利用によって、私たちは新しい価値を創造することができます。また、再利用によって、私たちは廃棄物の削減に取り組むことができます。
このように、古いものを再利用することで、新たなアイデアを発見し、新しいものを生み出すことができるのだということがわかりました。SDGsやごみの問題は大きくとらえるとどうすればいいかわからなくなりますが、みなさんもこんな些細なものづくりから始めてみてはいかがでしょうか。
平河 翔